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多様性を「装う」 vol.2

多様性を「装う」 vol.2

人見知りは逃げの言葉だと教えられてきたにも関わらず、人見知りが激しい。歳を経るごとにひどくなっている。それが理由というわけではないが、30代の頃、顔を白く塗って活動していたことがある。白く塗る行為は僕にとって仮面だった。人見知りではない自分に変身できたような気になり、普段より初対面の人と積極的に話すことができたようだ。

白塗りの活動は徐々に広がっていき、国内外、様々な人が顔を白塗りにするプロジェクトになった。ある日、「なぜ、白なのか?」を聞かれた。僕は答えられなかった。

人は、行動に理由を求め、探したがる。某ブランドのイタリア人社長は「彼らは平和を訴えるために、穢れ(けがれ)はないが危うい白にしているのだ。」と言い、ニュース番組のスイス人ディレクターは「歌舞伎の白を、現代版にアレンジして日本を表現している。」と評した。僕はどちらも否定しなかった。そういう見方もあるんだなぁと感心してしまったのだ。
もちろん、悪い見方もある。某自治体のプロジェクトに携わることになった際、住民から宗教団体と間違えられ、説明会で糾弾され、ナビゲーターという役割を降板したこともあった。

あるイベントに出演した際、僕のところに高齢者の男性がやってきて言った。

「顔を白くしてまで欧米人になりたいのか?」

冗談のような話だが、彼の表情は真剣だった。よくよく聞いてみると戦争体験者で白人に対し強い憎しみが残っており、顔を白く塗るロジェクトが白人至上主義のメッセージに思えたらしい。予想外の捉え方をする人も世の中には存在するのだ。

世の中の出来事には、全て理由があるという考え方もあるが、一方で、理由がなくて存在するようなことがあってもいいんじゃないだろうかと僕は思っている。理由はないけど、心地いい、理由はないけど、一緒にいる…「いい(よい)加減」で成り立つこともあるのだ。

結局、顔を白く塗るプロジェクトが終わるまで、明確な理由は見つからなかった。いや、あえて見つけなかったのかもしれない。最後の方は、「面白い」に、句読点を入れると「面(つら)、白い」になるよね…と煙に巻くように答えていた。

人見知り?今も格闘中である。

2020.07.02

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp