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近所のオカマが良いこと言った ~失恋した女子高生編~

近所のオカマが良いこと言った ~失恋した女子高生編~

近所に、いたって“普通”のオカマが住んでいる。
ぱっと顔を見たところ、60歳を超えているように思うが、人生経験の深さが顔に出ていて、存外お若いのかもしれない。手などは艶もあり綺麗である。

いつの頃からか見かけるようになったのだが、タンポポの綿毛のようにフワリと街に落ち着いたようである。

私は、変な差別的な意味はなく「オジバ」と呼んでいる。呼んでいると言っても、本人には面と向かって言ったことはない。お察しの通り、“おじさん”か“おばさん”か分からないという安直な理由である。

そんな、オジバは、いつも決まった喫茶店の決まった席に、決まった時間帯に陣取っている。そして、常連の顔なじみと談笑したり、一見(いちげん)さんにも気さくに話しかけて、人生の折り返しを、ゆっくり堪能しているようである。

私も顔なじみ(と自負しているが)で、よく話をすることがある。
そんな、オジバの100ある他愛もない話の中で、100に1つだけハッとさせられる言葉がある。
もしかしたら、もっとあるのかもしれないが、私が気付かないだけなのかもしれない。

今回から不定期で、そんな、オジバのハッとさせられた言葉を、少しの情景描写とともにお伝えしたい。もちろん、本人からは何も許可を得てないが、反響がおおきくなったら、ちゃんと話をしようと思う。

~失恋した女子高生編~

近所の高校の制服を着た女子高生が4人で入ってきた。3人は怒気に満ちた顔、1人は泣きべそをかいてる。何やら物々しい空気に、店内は少し張り詰め、気温が1度上がったように感じた。

A子 「ってか、ありえなくない!?」
B子とC子 「ありえない!」
D子 「・・・」

C子 「もう●●のこと忘れなよ・・・」
D子 「うん・・・」

まぁ、この最後の「うん・・・」までに、正味30分は悪態をついていたのだが、それは重要ではないので端折るが、要は、D子ちゃんが失恋したらしいのである。

最初、オジバは気にも留めてなかったようだが、ヒートアップする女子高生たちの状況をみかねたのか、途中から、少し気になったようでチラチラと彼女たちを見ていた。そして、D子ちゃんも、少し気を取り直し、他の子たちも落ち着いて、数分、いや、数十秒だったと思うが、長く感じる沈黙ができた。

その時である。
その瞬間を狙っていたのかいないのか、オジバが音もたてずに立ち上がり、女子高生たちのところへ行き、こう言った。

「失うのが怖かったら、最初から欲しがるんじゃありません。」

オジバ、、、女子高生には、まだ、酷というもんだろう。。。

2020.07.30

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ブッチ

ブッチ

高校卒業後に映画の都ハリウッドに行くことを真剣に考えたが、周囲に猛反対をされ、しぶしぶ大学に進学。しかし、年間1,000本以上の映画を観る映画オタクになっただけで、映画の道はあきらめきれずに映画会社にもぐりこむ。そこから、ズブズブとエンターテインメントの世界の底なし沼に嵌まり込み、今、人生の道を見失っている途中。次の分岐では、右に行くか、左に行くか。