世界のみなさま、こんにちは
「知り合った時からLGBTって紹介されればいいんだけど、友人や身内から突然、告白されると返す言葉と態度に自信がないんだよね」
「LGBTに関して日本ほど遅れている国はないわよ」
「パートナーシップ条例は、LGBT全員が喜んでいるってわけじゃないんだよね」
「キリスト教徒は万人救済主義なのにLGBTだけには厳しい気がする」
「よくも悪くも日本人は、LGBTに無関心だから、あからさまの差別は、ないんじゃないのかなぁ」
「LGBTを意識した商品や出会い系サイトなどは、ビジネスとして可能性があると思う」
glassgempopcorn(グラスジェムポップコーン、以下ggp)のキックオフパーティーで聞き取れた発言の一部である。その場で討論になることもあり、きっと、SNSに放出したら、さらに様々な持論が出てくるだろう。
こうした発言や表現に対し、ggpとして正誤判断はしない。投資家、広告代理店、映画館経営者、LGBTマーケティング評論家、デザイナー、カメラマン、編集者など、国籍、性別、職種を問わず、多種多様な人たちが参加し、それぞれ体験してきた人生を通して発言し、表現していくだけである。まさにサイトの名前の由来である「グラスジェムコーン」のように。「グラスジェムコーン」は世界で最も美しいと言われるとうもろこしで、遺伝子組み換えも薬品も使っていない自然の産物である。それぞれの粒の色は違い、規則性があるわけでもなく並んでいるのに、互いの色を消すことなく、一本のとうもろこしに多様性の美しい世界を創っている。
人間の世界も、それぞれの考え方や生き方があって当たり前で、本来、正誤で判断されることも、善悪を定義づけるものでもない。しかし、そうした「多様性を受け入れる」ことは、頭でわかっていても、なかなか難しい。
「そのままでいいんだよ」と言っている人でも、外国人がマンションの隣に住み始めたら生活習慣の違いに愚痴を言い、「みんな仲良くしようね」と叫んだ人が、金髪の日本人に道を聞かれ、眉をひそめる。矛盾が生じていることさえ気づかずに日々、生活を送っているのである。
みんな知っては、いるのだ。マジョリティが「正」で、マイノリティが「誤」でないことを。同時にマイノリティが「正」で、マジョリティが「誤」でないことも。他人を全て理解することは不可能だが、存在を受け入れることは可能であることを。72億4,400万分の1の見方、考え方があることを。
「ツカレタァ…」
オーストラリアの旅から戻ってきたばかりのデザイナーが、気だるそうにつぶやきながら入ってきた。モヒートを注文してソファに座る。みんなの会話に加わる気配もない。ふらりと立ち寄っただけといった感じで聞き流している。それも自然でいい。その人の性格や性質もあるだろうし、同じ人であっても、その時の環境や体調によって、同じ発言や表現が響くこともあれば、響かないこともある。
ggpでは理解を求めたり、扇動することもしない。時間を経て、他人の視点の違いに、はっと気づくこともあれば、自分の置かれた状況で判断する時の材料になることがあるかもしれない。多様性の考えに触れたことで、その考えが自分の中で熟成され、弾ける可能性だってある。
サイトにふらりと立ち寄るだけでもいいし、時には長く滞在して読み込んでいってもいい。途中乗車、途中下車自由の長距離バスのようなものである。どこに向かうバスなのか誰もわからない。その過程も楽しみながら、ggpは進み始めたところである。
この日のキックオフパーティーも、途中乗車、途中下車を繰り返しながら、最後は西麻布で朝を迎えたらしい。