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うちの町の小学校にも「だれでもトイレ」ができました。でも次の問題が…

うちの町の小学校にも「だれでもトイレ」ができました。でも次の問題が…

小さな町の教育委員に就任してから6年目に入った。

6年間というのは短いようで長い。変わらないようで世の中が変わっていく。その大きな一つが全ての小中学校の教室にエアコンが装備されたことである。体温調節機能が低下しないのだろうかという不安もあるが、気候変動、熱中症対策、発達障害の着席率向上、学力向上などと比べ、エアコン導入の弊害より有効の方が大きい……と認識している。おそらく、こんな設備を導入できるのも人口1万5千人規模の小学校3校、中学校2校の町だからできたこと。お隣の市の教育委員会は「うちではとてもできない、うらやましい」と嘆いておられた。市町村合併はいいことばかりではないのですよ。

5年前、最初の会議でLINEに触れ、情報モラルの話をした際、「LINEって線ってことかね?英語ではなく日本語で言いなさい」とある方がおっしゃったことを今でもよく覚えている。それが今ではグループLINEの仲間はずれや毎月のようにLINEに関するトラブルを耳にしたり、報告が挙がったりしている。それぞれの生徒会が一同に集まるスクールサミットが行われ、「情報モラル宣言」を自分たちで立ち上げるまでになってきている。

前置きが長くなってしまったが、LGBTに関してもそうである。2年程前、LGBTの話を会議で取り上げた時、空気が読めないと言われている僕でさえ、何か触れてはいけないものに触れてしまった雰囲気が漂ったことを憶えている。当時、文科省が既にLGBTに関する研修や教育に関する資料が配布されているにも関わらず。

しかし、今年、二つの学校でトイレが新しくなり、スペースを大きくとった障害者用のトイレもでき。先日、そのトイレを見せていただいたときのことである。

「障害者とLGBT向けにも対応できるよう、だれでもトイレという名前にしました」
校長先生がそう案内してくださった。

扉には「だれでもトイレ」と書かれている。こうした小さな町の小学校にもLGBTに関する認識が自然に広がってきている。

しかし、次の問題。実際、「だれでもトイレ」を子供が利用するかというと、そんなことはない。性自認に対する葛藤もあり、そこに入った瞬間、「あの子は……」と偏見の目にさらされてしまう危険性をはらんでいるからだ。そういった意識を変えていくには、まだまだ時間がかかるだろう。あくまで過程の一つでしかないが大きな一歩には違いないと信じている。

誤解のないように言っておくが上記に挙げてきたことは決して僕が何か行動を起こしているわけではない。たまたま世の中がそういった動きになってきていて、教育委員会の事務局が動き、教育委員はその報告を受け、承認するだけなので。それをふまえて述べていることを最後に付け加えておく。

2017.10.26

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp