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本当に差別していないですか?と自分自身に問いかけてみたら…

本当に差別していないですか?と自分自身に問いかけてみたら…

インドに滞在中、街を散歩していると、インド人男性が手をつないで歩いている光景を何度か見かけた。インドってゲイカップルに寛容な国だなぁと思ったが、調べてみたら、インドでは同性愛は自然の摂理に反する行為として犯罪だった。

その晩、日本人駐在員と飲んでいたときに、その話になった。
「あぁ、あれね。こっちでは親友になると手を繋ぐんですよ」
韓国と同じだったのである。

「仲良くなったインド人の男性の友人と飲みに行く時、いきなり手をつないできたことがありましたよ。びっくりして手を離したら、ものすごく悲しい顔をされましたからね」
僕も、もし、同じ立場だったら手を離すだろうなぁと想像しながら笑い合った。

あれから7、8年が経つ。

今年の正月、インドの旅から戻ってきた知人と手をつなぐ男性たちの話になり、女性だったら離さないけどね…と言って笑った瞬間、「あれ?」と思ったのである。
アライ(LGBT支援者)の立場で書き続けているが、実は心のどこかに同性愛嫌悪があるのではないかと自分自身を疑ったのである。
「考え過ぎじゃない?」と友人は言って笑い、僕も「だよねぇ」と、その場では笑った。

しかし、それは予想以上に大きなひっかかりとなり、しばらくLGBTに関する原稿は書けなくなった。毎日、欠かさずしていたLGBTのニュースのチェックもやめてしまった。

梅が咲き始めた2月下旬頃、書店で、たまたま「恋の相手は女の子」(岩波ジュニア新書)が目に留まり、久しぶりに手にとった。レズビアンの著者が同性婚をするまでの記録を中心にまとめた本である。

「友達に説明するときも、恋人の名前を出して、「●●とつきあっている」と言っていました。ほんとうは、だれでもなく、私自身が「レズビアン」や「同性愛者」を差別していたのです。
(中略)
日常でも「ホモ」や「オカマ」という言葉は、人をからかうときに使われていました。だから、そこに自分が含まれると認めたくなかったのです。そんな経験が、私の中に同族嫌悪の考えを育ててしまっていました。だから私は、中学生のころから「レズビアン」や「同性愛者」と呼ばれるものなりたくなかった。同性愛者である私の中に「同性愛嫌悪」があるというのは、とても認めづらいことでした」

僕のひっかかりは、これに似ているかもしれない。この媒体をはじめ、LGBTについて意見を述べると自分自身が「ゲイ」と思われるのではないかといった気持ちがどこかにあったのだ。

「それでも私自身を説明するために、多くの人に知ってもらうために、何度も何度も口に出すことで、私は私自身に刷り込まれた差別や偏見を「なんでもないこと」にしていきました」

この文章にすくわれた。ひっかかりを感じる僕が「なんでもないこと」に思えるまでLGBTについて取材をして書き続けてみようと思う。もし、できなかったら?その時は、また考えます。

出典:「恋の相手は女の子」室井舞花(岩波ジュニア新書)

2017.04.22

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp