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異性愛者だからこの服を着る?この服を着ているからゲイ?うんざりです

異性愛者だからこの服を着る?この服を着ているからゲイ?うんざりです

スーツを着る機会が以前より多くなった。とはいえ、スーツでなくてもいい会議や集まりだったら、まず着ていかない。

そんな僕の服装が気に入らない人が結構いる…ということに最近、気づいた。

全員に好かれるなんてことはないのだから仕方がないんだけど、気に入らない理由に首をかしげてしまうことがある。

ある飲み会に参加したときのこと。初対面の男性は僕がトイレに立った際、「イシコさんってゲイなんだろうか?」と聞いて周囲の笑いをとったそうだ。その時、僕はピンクのパンツを穿いていた。

イシコというペンネームと普段、着ている服装から、こういった経験は何度もしている。

その度に「よく間違えられるんですが異性愛者なんです」と言っていたが、最近、面倒になってしまった。
ゲイと間違えられて特に困ることもないので、このところ、「そうかもしれませんね」と答えることが多い。というより、この服を着ているから異性愛者だとか、ゲイだから、この服を着ているという考え方に、うんざりしているのだ。

「変な恰好で来るからだ。とりあえずスーツを着てこりゃ、そんなこと言われないんだよ」

フケだらけのジャケットと折れ目がほとんどないよれよれのパンツを穿いたおじさまは熱燗を注いでくれた。ちなみに、その会はドレスコードがあるパーティーでもないし、高級レストランでの会食でもなく、単なる飲み会である。

世の中には、とりあえずスーツさえ着ておけば無難という考え方があるらしい。何度も聞いたことはあるが、この「とりあえずスーツ」という考え方に僕は違和感を覚える。

「まぁ、お前はサラリーマンじゃないから仕方がないけどな」

おじさまに熱燗を注ぎ返すと、そう慰められた。

ただ、毎日、スーツを着用しているサラリーマンでも「とりあえずスーツ」という意識で着ていない人も多くいらっしゃると思う。

違和感は覚えるが、「とりあえずスーツ」という考え方でもいい。日々の思考に影響しなければ。ただ、残念ながら、今までの体験上、「とりあえずスーツ」、またはそれに似たことをおっしゃった方々を思い返すと影響はあるような気がする。

その飲み会の「とりあえずスーツ」のおじさまも楽しくおしゃべりはできたが、息子の大学名を連呼し、あそこにいる人は大企業に勤めているから立派だ、あの人は新興宗教に入っているから近くに寄らない方がいいなど本人の資質とは別の話が多かった。

「お前、次はスーツ着てこいよ。スーツさえ着ておけば、いいんだから。そうすりゃゲイとか言われないんだよ」

おじさまから別れ際に大声で言われた。

「他人の宗教とか会社とか、ましてや性的指向なんて知る必要ないですよ」

喉元まで出かかったが飲み込み、「了解しました。次はピンクのスーツで来ます」と答えた。

持ってないけどね。

2017.03.08

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp