同性婚の結婚式の招待状が来たら出席しますか?
性的マイノリティ、LGBTの文字がマスコミに飛び交い、いろいろな場所でLGBTに関する話題を出すことも多くなった。それでも、いざ公の会議で議題に載せると触れてはいけない話題のような張り詰めた空気になる状況は、あまり変わっていない。一方で「LGBTって何?ゲイ?ない、ない」と自分の生活とは関係ないから考えることを拒否する人もいれば、「もし、近くにそういう人がいたらひくなぁ」と眉間に皺を寄せた方もいる。それも現実である。
大学生たちと就活について話す機会があった。「LGBTの方の働きやすさ」を社内の風通しのよさの基準にしていると答える学生もいた。
ちょうど「同性婚リアル」(ポプラ新書)を読んだ直後だったこともあり、彼らに尋ねてみた。
「もし、友人がゲイもしくはレズビアンであることをカミングアウトしたとして、彼ら彼女たちが同性カップルとして結婚式をあげると言われたら出席する?」
その席にいた人たちみんなが、「う~ん」と唸る中、一人の学生が口を開いた。
「お祝いはしたいけど、自分が同性カップルの結婚式にいるところは見られたくないですね。SNSで写真はすぐに広がるだろうし…」
「サイテー」と周囲からヤジが飛んだが、唸っていた人たちもその部分が引っかかっていたのではないだろうか。「同性婚リアル」の中でも似たような話があった。出席することで自分がゲイやレズビアンと疑われることをよしとしない人もいる。家族と一緒に住んでいる人から、招待状を家族に見られたくないので郵送しないでほしいと言われ、手渡ししたこともあったそうだ。これまた現実なのだ。
地方都市で小学生から高校生までの子供がいる親たちと飲んでいた時のことである。話題になった映画に主演していた俳優がゲイかゲイではないかの話になった。
「別にゲイでも関係あらへんやろ」
「世の中の流れはそうなってきとるでなぁ」
それをきっかけにLGBTについて熱く語り始めたのである。
「戦国時代なんて、女性とSEXすると運気が落ちるって信じていた武将もいるらしいぞ。男のほうが気持ちいい場所知っているからなぁ。蘭丸とか床上手だったんやろか?」
下ネタまじりで言う人もいれば、
「日本には、欧米(=キリスト教)的な考え方が入ってくるまでLGBTに対する概念は鷹揚だったんだよ。それが、あれよあれよと生活習慣が変わり、思考まで欧米化された結果だと思う」
学者ばりに語る人もいる。
僕は大学生にした同性カップルの結婚式に出席するか否かの質問を彼らにぶつけた。
「友達のやろ?行くに決まっとるやんか」
その中にいた二人は即答だった。これも現実である。
世の中は思っている程、伝わっていないことは多いが、落胆するほど浸透していないこともなく、考えていないようで考えている人たちも存在するのである。
イシコ
女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。
セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp