レズビアンとわかったら左遷？
昨年、ゲイの脱北者チャン・ヨンジンさんが自叙伝小説を韓国で出版された頃と同じ時期だったと思う。
ネット上で北朝鮮のゲイの軍人の画像が飛び交った。朝鮮人民軍の2人組が抱き合ったりキスをしていたりするものだった。北朝鮮の兵役は10年以上と言われているのだから、軍人同士の恋愛があってもなんら不思議ではない。独裁政権だろうが核を持とうが性的マイノリティは存在する。ただ、北朝鮮には同性愛という概念もないのでLGBTに対する差別意識もないと言われ、それはある意味、いいことなのかもしれない。
一方、韓国はホモファビアの存在が目立つ国として知られている。
韓国映画「私の少女」に登場する主人公ヨンナムはレズビアンである。ソウルの警察に勤務するエリートだったが、レズビアンであることが発覚し、田舎町に左遷される。その町で暮らす女子中学生ドナと出会うところから物語は始まる。彼女は継父ヨンハから虐待を受けていた。
ヨンハの娘ドナに対する虐待を村の人たちは見て見ぬふりをしていて、ある晩、ヨンナムが虐待を受けている彼女を助けた。それをきっかけにドナはヨンナムの家へ救いを求め、何度も訪れるようになる。ついには夏休みの間、ドナを預かり一緒に住む。愛情に飢えているドナは、スキンシップを求め、お風呂にも一緒に入ってくる。
ヨンハはドナがヨンナムになついていることが面白くない。ある日、ヨンナムと彼女を追いかけてきた元恋人の女性と一緒にいるところを見かけ、ヨンハはその噂を村中に広める。次第にヨンナムに対し、少女への性的暴行の疑いがかけられる。びしょ濡れの状態で逃げてきたドナの服を脱がせタオルで拭いたことも、一緒に風呂に入ってきたことも全て疑いの目で見られてしまう。
「同性愛者だから問題があるんだよ」
警察の尋問における、この一言に全てが含まれている。
韓国では、今でもゲイもレズビアンも家族にカミングアウトするということは少なく、ましてや会社など社会でカミングアウトすることは、ほとんどないそうだ。彼ら彼女たちはソウルのLGBTが集まる場所にこっそり繰り出すか、facebookで偽名を使って知り合い、偽名同士で出会うことが一般的らしい。
カミングアウトした映画監督キムジョ・グァンスがパートナーと挙式した際、人糞を持ち込むなど日本では考えられないような嫌がらせのニュースも聞く。韓国のテレビの中においても、まだまだLGBTのタレントが出演する環境は乏しく、トランスジェンダーとしてテレビに出演しているハ・リスかゲイのホン・ソクチョンくらいしか見かけないそうだ。
その一方で、LGBTによるプライドパレードは、キリスト教団体などによって妨害は繰り返されているが、毎年、着実に行われているし、昨年は最高学府ソウル大学で大学史上初のレズビアンの学生会長が誕生しているという話もある。次世代の動きに期待したい。
「私の少女」
2014年 韓国 119分
監督：チョン・ジュリ
出演：ペ・ドゥナ、キム・セロン他
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イシコ
女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」（供に幻冬舎文庫）。
セカイサンポ：www.sekaisanpo.jp
