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ピンクの服は、「オンナフク」?

ピンクの服は、「オンナフク」?

「すぐわかったよ。おっさんがピンクのTシャツを着るなんて勇気あるよなぁ」

先日、待ち合わせ場所に立っていたら、友人から、そう言って声をかけられた。その日の飲み会は男性がピンクの色を身につけることに対しての是非からスタートになった。

療育支援のブログで保育園のエピソードを見かけたことがある。急に保育園に行かなくなった4歳の男の子がいた。ピンクの服を着ていった際、周囲から「オンナフク」と言われたからだった。「オンナフク」、つまり女の子が着る服だと言われてしまったのである。

そこで、女性の先生方は青、茶、黒といった、いわゆる男性らしいと言われる色の服を、男性の先生方は赤、ピンクといった、いわゆる女性らしいと言われる色の服を一週間以上、身につけて保育をすることにした。それだけではなく、様々な洋服を身につけて遊ぶ「お着替え遊び」を取り入れ、男性の先生方もスカートやリボンをつけて輪に入っていった。最初はからかっていた男の子も、そのうちスカートを選ぶことも出てきたそうだ。こうして、この保育園では「オンナフク」という発言は子供から消えた。

「すごくいい話だけど、自分の息子が中学生か高校生になってセーラー服を着たいと言い始めたら親としたら戸惑うよ。もし、その保育園に通っていたら、それが影響しているんじゃないかって思っちゃうかもしれないなぁ。心のどこかで違うとわかっていてもね」

親としての正直な意見であろう。

一緒に飲んでいた他の友人がスマホを取り出し、YouTubeで2年程前、話題になったミュージックビデオを見せてくれた。インターネットが生んだミュージシャン神聖かまってちゃんの「ズッ友」という作品である。ライブストリーミング配信の中で全裸や流血など過激だが、その危うさと繊細さから生まれる彼の表現のファンは多い。

「ズッ友」のミュージックビデオは、ヴォーカルの「の子」さんとモデルで俳優の藤田富さんが出演し、ボーイズラブの世界が描かれているとインターネット上で騒がれた。白のセーラー服姿のキスシーンから最後に手を繋いで橋を渡るシーンまで二人の恋愛物語を想像させるシーンが続く。僕も話題になった時、新進気鋭の山戸結希監督の世界観に圧倒され、ボーイズラブの目線で拝見した記憶がある。しかし、久しぶりに観直してみると少し違う感想を持った。

思春期の二人の関係性で、白からスカートだけが赤くなるシーンは、女性の生理も含め、大人になっていくということなのではないだろうか。ラストシーンで二人がピンクのセーラー服になっていく姿に、白と赤だけではなく、ピンクという世界もあるのだよという多様性の話に思えてきたのだ。

結局、その日の飲み会では男性がピンクの服を身につけることに対する是非の結論は出なかった。ちなみに僕はピンクよりオレンジの方が好きです。

参考:三輪堂、神聖かまってちゃん「ズッ友」

2016.09.26

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp