人差し指と薬指の長さとレズビアンとの関係性 映画「バウンド」より
女性誌の編集長をしていた頃、編集部やその周囲の女性たちで指の長さを測ることが流行ったことがあった。人差し指より薬指が長い女性はレズビアンかバイセクシャルであるという噂があったのだ。異性愛の男性は人差し指より薬指の方が長く、異性愛の女性は人差し指と薬指が同じだと言う。つまり、指の長さからレズビアンの脳と異性愛の男性の脳と同じ部分があるということを言いたいらしい。それから数年後、レズビアンの経営コンサルタントと飲んだ際にもその話が出たので、レズビアンの間でも話題になっていたようだ。
映画「バウンド」に登場するレズビアンのコーキーとバイセクシャルのヴァイオレットの手の動きを見ながら当時のことを思い出した。
「マトリックス」シリーズで知られるウォシャウスキー兄弟の初監督作品である。刑務所から出てきたレズビアンのコーキーは、マフィアの伝手でアパートの一室を改装する仕事に就く。隣の部屋で暮らすのはマフィアのシーザーとその恋人ヴァイオレット。コーキーとヴァイオレットは互いに惹かれあい関係を持つ。
ある日、シーザーとの生活に耐えられなくなったヴァイオレットはシーザーが預かっている200万ドルを持ち逃げしようとコーキーに持ちかけ、計画を立てる。
「セックスは初対面でもできるが、盗みはよほど信頼がないとできない」
そう嘯くコーキーだが、結局、彼女もヴァイオレットに惹かれているのだ。結局、引き受けることになる。文章で書くとありきたりの話なのだが、そこはウォシャウスキー兄弟の演出のせいか、何度観ても引き込まれてしまう作品である。
肝心の二人の人差し指と薬指がどうだったかは、実際、映画を観て確かめていただくとして、僕と周囲が振り回された噂話が今さらながら気になったので調べてみた。
カルフォルニア大学のマーク・ブリードラブ教授の研究が元になっている話で、まんざら根も葉もない都市伝説でもなかった。彼は人の指の長さは子宮内における男性ホルモンの量に影響されると発表していたのだ。つまり、指の長さから妊娠中に胎児が浴びる男性ホルモンの量の目安として採用できると言うのだ。もちろん、レズビアンになる原因が胎児のときの男性ホルモンの量と関係するということではない。ちなみにゲイとバイセクシャルには指の特徴的要素は見られなかったようである。
「バウンド」
1996年/アメリカ/108分
監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー
出演:ジェニファー・ティリー、ジーナ・ガーション、ジョー・パントリアーノ他